無形化戦略ゲームの構想
以下は経済現象を可視化するゲームの構想ですが、今回これを一般ページで公表する理由について、最初にちょっと述べておきましょう。
もともとパスファインダー物理学チームには、正規の講義に属するハードな部分と、遊び感覚の課外活動のような部分の二つがあり、その双方をもつことが必要と考えられています。そして前者に属するのが、例えば作用マトリックスN乗理論やステルス建築理論、国際情勢の分析などであり、後者に属するのが無形化世界を可視化した映画構想などです。
そしてこの経済可視化ゲームは、すでに一部がアップされている「現代経済学の直観的方法」と、ちょうど表と裏で対をなす格好になっており、「現代経済学・・・」が前者の正規の講義だとすれば、このゲームはそれを補完する後者の課外活動部分に相当していると言えます。
今までは一般ページで公表するものは、ほぼ前者に属するものに限られていましたが、昨今の知的世界のレベルや士気の低下を見るにつけ、われわれとしても、むしろ後者の部分を公表して間口を広げ、そこからの力の助けを借りていくことが不可欠になってきているのではないかという懸念が強くなってきています。
そのため、今まで未公開だったこの原案も、一般ページで公表して間口を広げておこうということになったというわけです。
この企画は、必ずしも理系の人でなくても参加できますし、学生などでも意外に趣味として作れる部分があるのではないかと思えますので、そういう方がおられれば、こちらとしては大歓迎したいところです。(私自身はあまり電子ゲーム自体に詳しいわけではないものですから。なお、私が砲に詳しいのは、高校時代に弾道計算に熱中していたことの名残りです。)
いずれにせよ、この「経済戦争の可視化」に類するものは、遅かれ早かれ今後の世界で本格的に求められていくと予想され、その意味ではこれは世界に先駆けてその先陣を切ることになると思われますので、多くの人々の参加によって大きく育てていければと願っています。(20050321 長沼)
経済の可視化による戦車戦ゲームの基本構想原案
以下は、経済戦争などを戦車戦として可視化するゲームに関する基本構想である。しかしこれは従来のゲームの概念を大きく超えたものであり、大げさに言えば、われわれの退屈な日常空間をまるごとドラマティックな戦記とそのゲーム空間に一変させてしまう可能性を秘めたものである。そこでその概念についてあらためて説明しておこう。
現代世界では経済力やメディアの力が軍事力にとってかわり、それら形のないパワーによる戦争が軍事的戦争にかわって主役となっている。つまり今や無形化した戦争そのものが世界史の実体なのである。
そして「無形化世界の力学と戦略」ではこの考えを極限まで押し進め、
・経済力を陸軍力に
・メディアの力を空軍力に
・研究機関の知的影響力を海軍力に
それぞれ対応させ、過去の軍事戦略・戦術のパターンがそれぞれの世界の中にほとんど完全に再現されて、全体として巨大な無形化された戦争が展開されていると捉える。
事実それらのエネルギーは定量的な換算がほぼ完全に可能であり、例えば15秒CM1本のオンエアの力は、航空爆弾2kgの力に等しいと計算されている。
つまり以下のゲームは、そのうちの陸軍力、つまり企業間の経済戦争の部分を戦車戦としてゲーム化するものである。そしてその基礎となる概念が前記のように巨大な背景をもっているため、将来においてもっと大きな発展の可能性を秘めており、これが単なる戦車戦ゲームで終わってしまうものであるとは、むしろ考えにくい。
例えばもしその戦車戦のパターンが、本当に経済戦争のパターンを正確に再現しているのだとすれば、プレーヤーはたとえ経済について何も知らずとも、このゲームを行なうだけで経済現象の本質的パターンだけは自然に把握できてしまう理屈である。
つまりある意味でこのゲームは経済の教材としての役割も果たせるわけで、うまくすれば将来的には、経済の知識を全く持たない人間が経済新聞を読まずとも、ゲームの結果として作られる戦車戦の映像を見るだけで、国際・国内経済の状況が7割までは把握できるようにするなどというところまで発展する可能性がある。
そうなった場合、従来の経済新聞を補完する存在として、それに匹敵するほどの需要を獲得することもあり得ない話ではない。
何が真の世界史の映像記録か
また先ほど述べたように、このゲームの背景である「無形化世界」の概念は、陸軍つまり企業間の経済戦争ばかりでなく、メディアの「空」や知的世界の「海」をも視野に入れている。そのため戦車戦だけでなく、例えばメディア同士の視聴率競争なども、これとは別に独立に航空戦としてゲーム化していくことが可能だろう。
そしてそれらは完成後に互いに接続でき、その時そこには現代世界に繰り広げられている目に見えない壮大な陸、海、空の大戦争のパノラマ映像が出現することになるのである。
恐らく最近誰しも感じていることだろうが、現在、テレビや新聞の報道などをいくら見ても、列車事故などの突発的な映像が脈絡なしに並んでいるだけで、世界の行方がどうなるのかさっぱりわからない。だがそれも道理で、核兵器とコンピューターの出現以降、真の歴史のストーリーはカメラに写らない世界で展開されるようになり、現在のジャーナリズムの映像記録はもはやhistoryをなしていないのである。
むしろ現代では真のhistoryは、そういった無形化されたパワーの中にこそ存在するのであり、その意味でこのことは「世界史そのものが無形化世界の中に引っ越しつつある」と表現した方が遥かに真相に近い。
そのため、将来的には世界史の記録そのものも、これら無形化したパワーを何とか可視化して、それを中心に記述していくことが必要になってくる理屈である。
そうなってくると、この可視化ゲームの結果としてできるパノラマ映像は、確かに人手を加えて絵にしているという点では、ちょうどナポレオン時代に従軍画家が描いた絵のようなものに過ぎないが、むしろ真の世界史と戦史の映像を後世に残すという点で、結果的に在来型のフォトジャーナリズムにとってかわるという可能性さえ視野に入っているのである。
とにかくこのようにこの「可視化ゲーム」は従来のゲームの概念とはかなりかけ離れたものであり、最終的にはそれはシューティング・ゲームではなく、むしろネットワーク上で戦史の公式記録映像を皆で育てて後世に残す、「アーカイブ製作ゲーム」とでも言うべきものが中心になっていくものと思われる。
そもそもこれをゲームと呼ぶこと自体、適切かどうかわからないが、ともかくそれがまず幹の部分にあって、そこから派生する形で、演習用の戦車戦シミュレーションなどが枝葉として付随することになるわけである。
ゲームに用意されるモード
そのためこの可視化ゲームには、独特のモードがいくつか用意されることになり、ゲーム全体の概念を把握するには、むしろそれらについて知るのが早道だろう。このゲームで用意されるモードは主として以下の三つである。それらは、
・「アーカイブ・モード」
これは三つの中で最も高度なレベルのモードで、ある程度の知識をもった一部のユーザーが、自分が身を置く企業の経済・財務データ(公表されているものだけで可)を入力することで、ネットワーク上に戦場の光景を描き出していくためのモードである。
その意味ではユーザーはこのときプレーヤーというよりも、ゲーム製作を分担しているようなものであり、「後世への記録映像を残す作業に参加する」という楽しみを得るために、それを行なうわけである。
・「戦場視察モード」
これは、先ほどのモードで十分なデータが集積されて戦場の光景がほぼ完成した後に、プレーヤーがジープやヘリコプターなどでそこを走り回って視察して回るというモードである。
これは、まだ経済新聞を読みこなせない社会人1年生などが、迅速に経済社会の今を理解するためには非常に効果的であり、こちらもゲームのプレーというよりは多分に「経済の学習」としての意味合いをもっている。
プレーの具体的な形態はまだはっきりしていないが、その案の例としては、ジープを走らせていて、これはと思う戦闘を目撃した時にそれをカメラで撮影し、持ち帰ったフィルムに写っていたものを、過去の経済新聞の記事と照合するなどという方法なども面白い。
逆に、何々に相当する戦闘を探してカメラで撮影せよ、というミッションで偵察に出るということでも良いかもしれない。無論、現実の経済情報が十分に蓄積されれば、ただ定点カメラで映像を見ているだけでも十分楽しめるだろう。
また新入社員が、自分の企業がこれまでどういうことをやってきてどういう立場にいるかを学ぶのにも非常に適しており、経営者から見ても社員教育に役立つ部分はかなりあると思われる。
・「演習モード」
これは、演習用に架空の戦場を設定して、そこでシミュレーションゲームとしていろいろな戦略・戦術を試すモードである。このモードだけが従来の意味での「ゲーム」そのものであり、ユーザーは文字通りの「プレーヤー」としてこれをプレーできる。
ただしそこにもやはり図上演習や訓練としての意味が含まれており、現場の経済人が戦略を練るに際して、考えをまとめる助けとするために実際に使うということも可能であろう。
そして戦闘が経済の場合とどう対応しているかは、例えばミッションが一旦終わった後、それをプレイバックすると、映像の画面上に文字情報の形でその説明や対応状況が表示される、というやり方などが考えられる。
このモードはあらゆる意味で三つの中で最もベーシックなものであり、ゲームを製作する場合には、まずこの演習モードの部分から着手した方がスムーズに行くのではあるまいかと思われる。
これらが最終的にどのような形態に発展していくかはなかなか予測が難しいが、ただゲームのプログラム自体はそんなに難しくない。例えば現在市販されているパソコンのタンクバトル・シミュレーションゲームの中には、いわゆるエディター機能、すなわちプレーヤーが自分で好みの戦場を作れる機能がついているものがあるが、その部分をネットワーク上に置き、その入力のための情報処理に多少手を加えてやれば、それだけで「アーカイブ・モード」の大筋は出来てしまう理屈である。
ただしそうは言っても、その情報処理の部分を詰めるのが結構骨なので、そのためにもひとまず「演習モード」だけでとりあえずゲームを一通り作ってしまったほうが賢明だろう。
その場合、プログラムを作る際に、演習モードのプログラムの中の「設定入力」の部分を、後から簡単にいじったり外部からの入力ができたりするようにしておけばよい。つまりあたかも「外部端子」をつけておくようにして、ネット上で処理された情報をそこから入力できるようにしておけば、後で「アーカイブ・モード」へ比較的容易に拡張できるはずである。
また、グラフィックに関しても、このゲームの性格上、戦車などの形状の細部は最初の時点では不明ということになっており、多くのプレーヤーの参加を通じてだんだん判明していくものであるため、細部の精密な描き込みは最初の時点では必要ではない。またグラフィック自体、硝煙を通して見る粗い映像の方が臨場感があり、最近のような精緻すぎる映像はむしろ避けた方が望ましいのではあるまいか。
ゲームの基本構成
では細部に移ろう。この「可視化ゲーム」(と呼んでおこう)はネットワーク上で成長していくものであるため、本来ならばその基本となるデータは「アーカイブ・モード」で大勢のプレーヤーからが入力されて、ネットワーク上にそれが集積されねばならない。
「演習モード」の場合には最初からそのデータを適当な値に設定しておけば良いので何も問題はないが、「アーカイブ」「戦場視察」モードでは、ネットワークが稼働し始めたばかりのその初期段階ではまだ詳しい戦いの状況はわからず、その映像は霧の中の光景のようなものでしかないことになる。(まあ現実にも末端の兵士がリアルタイムでわかっているのはその程度なのだが。)
ところがしばらくすると、同一戦場にある他の企業からの入力と合成されることで、映像はネットワーク上でだんだん鮮明になっていく。それを見ながら、さらに細部のデータを入力していくわけである。
そこで以下に、ユーザーがデータとして何を入力するかを述べる。(ただしもし先ほど述べたように、最初ひとまず「演習モード」だけの戦車戦ゲームを作って、それを動かしてみながら徐々にアーカイブ・モードの細部を決めていくというやり方をとる場合、以下に述べることはむしろ後回しで良いことになるが、ゲーム空間のイメージをつかむために、一応先に述べておこう。)
アーカイブ・モードでの基本設定の入力
一番最初に、まずそれがどの市場分野での経済戦争なのかを入力する。例えば自動車市場を巡る経済戦争であった場合、画面上にリストアップされた市場分野の表の中から「自動車」を選んで入力すると、まず戦場区域が決定される。(つまり同じ市場分野が入力されていれば、別のユーザーからの入力もネットワーク上で同一の戦場情報として処理される。ただし市場は国別に個々に設定される。)
次に自分の企業名を入力(大企業の場合はやはり表の中から選択)することで、戦力の所属なりIDなどが決定される。そしてその企業がその経済戦争で経験した経済データが順次入力されていく。
まずその企業の資本金、年間設備投資、従業員数、ブランド力レベルなどによって、基本装備と戦力編成などが決定される。
そしてその市場制圧に投入された資金量によって、実際に作戦に投入された戦力が換算されて求められる。
具体的には、ある企業の年間設備投資額の数字を5億円で割った数字が、その企業の仮想的戦車保有台数である。
達成目標とその評価
ところで一般にシミュレーションゲームでは、各ミッションの「達成目標」が設定され、それを目標にゲームが進行するが、この場合には何がそれに相当するのだろうか。
基本的に言えば、それは「油田(油井)の確保」である。つまりここでは、各企業がその活動によってどの程度の利益を上げたかということが、地下の埋蔵燃料をどれだけ確保したかという形で表現される。
そもそもここでは基本的な世界観の設定として、現在の無形化された戦場は一種の半中世的政治状態、つまり国家の統制がそれほど強くなく、地方勢力が各拠している状態であると捉えられている。
そして中世の軍団がしばしば自分を養うための食糧確保自体を目標に作戦行動を行なっていたのと同様、現代の無形化された師団も、自活のための燃料を求めて作戦行動を続けていると考えるわけである。
そのため目的地に存在している油田をいくつ確保したかが、ここでの達成目標となる。そして無論それは各企業が得た利益の額から換算される。
ただしそれは油田と言ってもそんなに大きなものではなく、むしろ燃料油井と呼んだ方が良いぐらいの小さなものである。つまりそういう小さな井戸が広い範囲に無数に分散していて一つ一つは簡単に掘れるが、反面それぞれが比較的早く枯渇してしまうという形態になる。(それは市場需要の飽和を意味する。)
・一方損害に関しては、損失額ないし売れ残り量などのデータ入力によって決定され、それが例えば「戦車何両の損失」という形に換算される。それは通常は「被弾撃破」で表現されるが、場合によっては「燃料不足で擱座」という局面もありうるかもしれない。(大体このゲームの場合、特に演習モードでは、一発で戦車が完全撃破されるという単純な形にはなりにくく、むしろダメージ量が蓄積してそれがスコアの中で評価される、という形になると思われる。)
地図の表現
・次に戦場地図の設定だが、まず戦場の面積は、その市場が一般に「何億円市場」と試算されているかで決められる。つまりその金額が面積に換算されて、戦場マップの面積が決まるわけである。(その換算には仮想地球儀での面積換算法を同じものを用いる。まあ大雑把には1億円の市場規模が1平方kmに相当すると思ってよい。)
次に各企業が最初の時点でどのような方位的な位置関係にあるかも、「アーカイブ・モード」では、一般に知られている市場シェアの順位をもとに決められる。
それは面倒なら大体次のようにすればそれらしくなる。すなわちまず、市場シェアにおいてナンバー1の企業とナンバー2の位置関係が、ちょうど目的地をはさんで180度の反対方向にあるように配置される。
そしてナンバー3以降の企業は、残りの角度を割り振っていくが、もし企業同士の間に同盟関係があれば、比較的近い角度を割り振っておく。(以上は、ゲームの製作側が抱えている経済アナリストによって、最初からデータとしてまとめられている。)
地形の起伏
一般にここでは経済戦争における地形は、高所得層の市場が高地に、低所得層の市場が低地に、それぞれ対応する。そのためアーカイブ・モードの場合、もし狙う市場の消費者の所得レベルがわかっていれば、入力してもらって映像に何らかの方法で合成される。
つまりある製品が結果として高所得層に多く売れたとしたなら、確保された燃料油井は高地に多く分布していたという形で、地形が設定されるわけである。
なおここで考える「高地」はさほど険岨な地形ではないゆるやかな高地で、地表も平らで乾いていて、むしろ車両は行動しやすいものとする。つまり重い車両でも通過できるが、身を隠す遮蔽物が比較的少ないので、装甲の薄い車両には不利である。
逆に低地は、一種の谷であって、身を隠す遮蔽物は多いが、地表がぬかるんでいたり砂が溜っていたりして表面状態が悪く、重い車両の通過は困難である。
鉄道線路
そして戦場の地形の中には、通常1本ぐらいは単線の鉄道線路が走っている。(これは銀行を表現する。)
これについては後にあらためて述べるが、演習モードの場合、ミッションの一例として、戦車が目標地点を占拠した後に、補給列車と落ち合って再補給を受ける(銀行から追加融資を受ける)、などというものが考えられ、その際に必要となるからである。
ただしアーカイブ・モードの場合、線路を地図上のどの位置に描くかに関しては今のところ明確な解析の指針がなく、適当な位置に描いておくしかあるまい。
戦車戦の様子
ではいよいよ個々の戦車戦の細部に移る。まず基本的な対応として、
・主砲の性能=品質、
・正面装甲=ブランド力、
・車両重量=価格
であると決められている。
つまり相手のブランド力=正面装甲が少々厚くても、こちらの品質=主砲に威力があれば、それをぶち抜くことができるというわけである。
ただし側面装甲の場合は事情が異なり、相手に近距離で横へ回られると、どんな戦車でもその側面装甲では相手の主砲弾をはじき返せず、ほぼ必ず貫通されてしまうと仮定する。(つまりもともと側面装甲は戦車同士の戦闘のためのものではなく、前進中に歩兵の小銃弾や砲弾の破片を防ぐためのものでしかないのである。)
そのため逆に言えば、かなり弱い戦車でもうまく相手の横に回り込めば、撃破できるチャンスがあることになり、そしてそこで物を言うのが機動力である。
価格の値下げの表現
経済戦争においては値下げ競争が重要な意味をもつが、一般に商品を値下げして競争力を上げたり購買層拡大を狙ったりすることは、戦車戦においては次のことに対応する。
すなわちそれは基本的に、車両などの防備を軽くすることで機動力を上げることに相当すると考えるのである。
そのため製品の価格をどの程度下げたかのデータは、戦車などの装甲板(ただし主として側面装甲のみ。もともと側面装甲は何枚かの増加装甲板の着脱式で、厚くしたり薄くしたりできると設定されている)が投棄されて車体が軽くなったこととして表現される。
そして市場争奪戦においてはそれは、車両軽量化に伴う機動力向上によって、地図上で行動可能なゾーンが増え、相手の側面への迂回攻撃のチャンスをつかめるという効果を生む。
ただし無論、側面装甲を薄くしてしまっているので、ダメージ量がそれに比例して増えるのは避けられない。それらのダメージは指数としてスコアに反映され、場合によっては受けたダメージは映像の中にも表現されることもある。
なお価格低下によって低所得層に市場を新たに生じさせることができた場合、それは車両軽量化で新たに行動可能となった低地に、いくつもの燃料油井が含まれていることに相当し、当然それらの確保も可能となる。
正面装甲レベルの決定
一方、戦闘車両の正面装甲の厚さは、先ほど述べたようにその企業の「ブランド力」を意味しているが、アーカイブ・モードの場合、その指数は、経済雑誌の特集などで公表されるランキングなどをもとにアナリスト側があらかじめ決めておき、プレーヤーはただ企業名をインプットすれば良いようにしておく。
それは一律何センチと定めるよりは、例えばある企業と企業の間で1.03倍、などという指数として、戦闘車両の種類ごとに適用する方が良いだろう。
演習モードの場合は、単にゲームバランスの面のみから適当に設定して差し支えない。
それらに基づく戦車戦のパターン
要するに整理しておくと、側面装甲を投棄して車両重量を軽くすると機動力が上がり、行動できる地表領域の割合がアップすることになる。側面装甲を最大限に装着した鈍重な状態だと、戦場には全体の面積の10%ぐらいしか通過できる場所がなく、その外では信地旋回(キャタピラを左右逆に動かしてその場で車体の向きを回転させること)さえできない。
ところがここで側面装甲を段階的に投棄して車両を軽くしていくと、戦場の中で行動できるゾーンの面積が20%、30%・・・と増えていき、接近戦において相手の側面に回り込む機会を多く作ることができる。また防御の際にも、相手に側面に回られた時に素速く逃げたり車体の向きを変えたりできて有利である。
しかし側面装甲を投棄すると、戦闘中の損害は必ず蓄積して大きくなるので、それを行なうのは最小限に留めた方が賢明だということになる。
なお信地旋回は、よほど良好な地表の上でないと出来ないものと仮定しておく。つまり単に通過ができるだけの地表よりも一ランク良好な地表でないと、信地旋回はできないとしておくわけである。
つまり「直進で通過することだけはできるが急旋回などはできない」という領域があるわけで、このゾーンにいる時に急旋回したい場合には、とにかく一旦直進してもっと良い地表状態のゾーンに移動してからでないと急旋回はできない。
そのためこういうゾーンでは、相手がいきなり側面に現われた場合、そのまま信地旋回で車体の向きを変えて正面装甲を相手に向けるという対応はできない。
この戦車戦の場合、装甲厚と主砲の関係が非常に重要なので、とにかく車体正面装甲を相手に向けておくことは鉄則であり、砲塔だけを回しても仕方がない。(余談だが、そうだとすれば、いっそ登場させる戦車の形状そのものを、砲塔をもたない突撃砲、駆逐戦車タイプにしてしまった方が、ゲームとしては面白いかもしれない。)
こういう場合には、どうせ役に立たない側面装甲をまず一段階、爆破投棄して行動能力を増し、現在位置で車体を旋回させて相手に正面を向けるか、あるいは新たに行動可能領域となった安全な低地に移動して逆に相手の側面に回り込むという形で対応がなされる。
つまりライバルが市場に低価格攻勢をかけてきた時には、やはりこちらも価格を下げて対抗せざるを得ないわけということが、こういう形で表現されるわけである。
主砲の操作状況
なお、特に演習モードの場合、双方がせいぜい1両から数両の少ない戦車で対決することになるので、通常の戦車戦シミュレーションのように主砲の能力が非常に高くて、ボタン操作で指定した目標に初弾必中、一発撃破、というのでは、あっという間にゲームが終わってしまう。
(大体現実の戦車戦では、1回の戦闘で敵戦車を5両も撃破できればそれだけで十分に勲章ものなのであり、通常の戦車戦ゲームのようにじゃんじゃん敵戦車を撃破できるということ自体が、もともと不自然なのである。)
そのためこの場合、砲の照準自体もプレーヤーが手動で行なって、命中弾を与えるまでには双方が何発も撃たねばならないようにしておく必要がある。(それにゲームの進行上、走行中に射撃を行なうことは滅多に起こらず、停止状態で射撃することが多くなると予想されるので、射撃時には砲の操作に専念して差し支えないのではあるまい。)
そしてできれば実際の射撃と同様、水平方向の照準だけでなく砲の仰角も正しくセットしなければ命中しない、という風にするのが望ましい。
ただしこの場合、命中弾を与えるのが難しいかわりとして、たとえ命中せずとも至近弾ならば、砲弾の破片でそれなりのダメージを与えることができるとする。無論相手の側面装甲が薄ければ与えるダメージも大きく、何発もの至近弾でそれなりにスコアを稼げることになる。
なお、目標に砲弾を命中させたことは経済世界では、本来の照準が正しかった、つまり製品投入の「狙い目が正しかった」ことを意味するから、その狙い目の正しさにちゃんと品質=貫徹力が伴っていれば、文字通りのヒットとなる。
ただこの場合でも、必ずしも1発だけで相手を完全撃破できるわけではなく、完全撃破には数発の命中弾を与えることが必要だとしておいた方が、経済戦の実情をよく反映するだろう。
一方至近弾はただの「中ヒット」だから、双方同じ中ヒットだと、値段を安く設定しすぎた側が結果的に苦しくなるのは当然だろう。
高い射撃命中率を得たい場合、正面装甲の厚い(あるいは主砲の強力な)戦車ならば、相手を見下ろし易い凸地に上って射撃を行なうのが定石であり、逆に軽くて機動性の良い戦車ならば、凹地に身を隠して至近弾によるダメージを減らすのが定石である。
これらによって射撃の相対的なスコアがかなり影響を受けるため、できればこの射撃効果がちゃんと算出できるようになっていると、ゲームの射撃の部分に非常に厚みが出てくる。
そしてこちらの攻撃が相手にどの程度のダメージを与えたかは、観測員がかなり正確に観測して戦車長に文字情報で伝えてくれるという設定にしておくのが良いだろう。(それが何もわからないまま戦っていると、プレーヤーにフラストレーションが溜ってしまうことになる。)
そのため戦闘の結末も、必ずしも相手戦車の撃破で終わるのではなく、どちらかが撤退することで終わり、スコアの比較で勝敗が判定されるという、よりリアルな形になる場合が結構あると予想される。
なお命中率の設定は、演習モードではゲームバランスの観点のみから行なって差し支えないが、プログラム上ではやはりその設定入力を「外部端子」につなげられるようにしておき、アーカイブ・モードの際に使えるようにしておくのが賢明かと思われる。
CMの航空戦力の表現
・一方、その戦場上空を飛ぶ近接航空支援機も可視化されており、それはこの戦場付近にいる全員から見えることになる。(ただしこれに関しては、冒頭でも述べたように、航空戦に関するゲームをこれとは別に独立して作り、後で接続するという形態をとっても良いかもしれない。)
無論このデータを求めるためには、広告予算をいくら投入したかを入力して行なう。特にテレビCMを流した場合、そのCMがオンエアされた番組とその日時も入力する。
そしてこのデータは、航空戦全体を可視化するためのネットワークとも接続され(まあこれらのネットワークは最初から別々にせず陸と空を統合しておいても良いが)、各番組の視聴率データから、自側勢力が飛ばした近接支援機のうち何%が撃墜されずに目標上空まで到達・投弾したかが換算され、それが最終的な映像となる。
無論そこには視聴率から求めたタレントの仮想撃墜スコアの情報なども含まれ、ミーハーのプレーヤーでもそれなりに面白がれるようにしておく。これらのベースとなる情報は広告代理店が大体もっているはずなので、最初の段階でかなり充実したものを準備しておけるはずである。
実のところ「戦場視察モード」では、その極初期段階では地上の映像はかなりしょぼい状態がしばらく続くと予想され、ある程度時間がたたないと、見ごたえのあるものは形成されないだろう。そこでその期間、プレーヤーの関心をつなぎ止めておくためには、むしろこの低空での航空戦を地上から野次馬的に眺められるようにしておくことが必要かと思われる。
というより、もし戦車戦ゲームをまず演習モードだけから作っていくとすれば、逆にアーカイブ・モードに関しては航空戦の部分から作っていって、両方をつなげていく、という製作形態が最もスムーズではないかと思う。
考えてみると、どのドラマが何%の視聴率をとったかなどいうことは、従来は何だか雲の上の他人事で、中高年サラリーマンなどにとっては関心外のことだったように思われる。
しかし自分の企業がCMを中でオンエアしているドラマが高い視聴率をとることが、自分の戦車部隊の上空での航空戦として可視化されるとなれば話は別だろう。つまりこの場合のドラマなどの番組本体は、「CM=近接支援機」を護衛する戦闘機であり、それが高い視聴率をとれば相手側の航空戦力を駆逐でき、自側戦車部隊の上空を安全にできると共に、相手の戦車部隊の頭上に爆弾を降らせてくれるわけである。
それを映像で見られるとなれば、中高年サラリーマンにとっても場合によっては、下手な野球の試合結果速報よりも面白いものになるだろう。
空戦自体はドッグファイトは滅多に行なわれず、もっぱらAAMを撃ち合うジェット戦闘機同士の空戦となろう。また搭乗員は撃墜されてもほぼ百%パラシュートで脱出しており、さほど悲惨なイメージではない。
そして「情報表示モード」に切り換えるなどすると、映像上で各航空機に対応する番組名などの情報が文字でそれらの位置に示される、という形態が良いだろう。
(なお最初の時点では、航空戦の様子は割合と格好が良く、あまり悪いイメージではないが、ゲーム世界の認識が深まるにつれて、次第に後に述べるような空のダークな実情、つまり航空機全体の行動がIFF=敵味方識別装置に完全に支配されていること、そしてそのIFFが後に述べる「オーバーロード」によってバイアスがかけられている−−最小語数の原理に支配されてしまっている−−ことなどが、明らかになっていく。)
初期段階ではどのようなゲームになるか
ではプロトタイプというか、初期段階ではゲームはどのような形態となっているかを予想してみよう。なお最初の段階ではまだ「アーカイブ・モード」は稼働しておらず、演習モードのみ、あるいはそれに戦場視察モードの簡単な見本版と今後の発展計画の解説文がついている、という状況が想定されている。
ではまず演習モードの方から。
演習モードの様子
演習モードで用意されるのは、戦車1両、あるいは大きくともせいぜい戦車小隊ないし戦車中隊規模のもので、内容的にも従来の戦車戦ゲームとほぼ同じものになる。そのためその基本部分に関しては、従来の戦車戦シミュレーション・ゲームをかなり参考にできる。
一般にその種のゲームでプレーヤーが見ている画面では、メインの戦場視野画面の脇に、小さな戦術情報マップが示されていることが多い。つまり地形の高低情報や敵戦車の位置などがマップに表示されている小画面である。
そのためこの場合にもやはり同様のものをつけると良い。ただしその地図に示されるのは、厳密に言えば地形の高低情報ではなく、現在の戦車の重量で行動可能な領域の情報である。つまり例えば、
・通過可能な地面をグリーン、
・通過不能な地面を赤、
・そしてその中間、すなわち直進による通過やごく緩やかな旋回はできるが、戦闘に必要な急旋回、信地旋回はできない地面を黄色、
でそれぞれ表示する。(ただし一般的傾向として、低地は高地より行動困難という設定になっているので、実質的にそれは標高と同一視できる。つまり最初のパイロット版では色分けを標高で行ってしまって、高い方から低い方へ三色で表示してしまえば当面は十分だろう。)
つまり目的地への移動は、大体は黄色のゾーン上で行われることになるが、そこでは左右への走行中の旋回は、角度にして毎秒せいぜい5度ぐらいの緩やかな旋回しかできず、360度一周するのに1分ぐらいかかるとする。
そしてこの戦車戦ゲーム特有の操作として、キー操作によって側面装甲板の段階的な投棄が行なわれ、その時の車体重量が表示される。当然その重量に対応して戦術情報マップ上の行動可能領域も増えていき、そこを通過する際の速度も上がっていく。
その反面、側面装甲を投棄しすぎた場合、砲弾の破片や小銃弾などによるダメージが蓄積し(つまり撃破はされないが乗員が負傷したりする)、それが後で失点としてスコアから差し引かれる。
このように、普通の戦車戦ゲームの場合に比べると、このゲームでは各部の装甲の厚さが勝敗の要素に占める割合が大きい。そのため車体各部の装甲装着状態を表示する小画面も必要で、それが割合に重要なものとなる。(ただしあまり細かく、例えば右上面のどこどこの部分の装甲を投棄せよ、などという精密な指示を出すようにすると、ちょっとダメージ計算が大変になりすぎる。そのため単に、側面装甲を5段階ぐらいに設定し、それを何段階まで投棄するかをプレーヤーがキー操作で決定する、というぐらいが丁度良いだろう。)
そしてその小画面には、現在の車体重量、および受けているダメージの合計値なども表示される。
そして全般的に見ると、これは普通の戦車戦ゲームに比べて反射神経とスピードが物を言う局面は比較的少なく、むしろ彼我の装甲状態をじっくり検討して次の手を決めるという局面が多くなりそうである。(もっとも、不意の値下げによっていきなり側面に敵戦車が出現する、というシチュエーションはしばしば生じるが。)
そのため戦車長の立場でそれを検討するためのチャート画面も表示できるようにしておくと良い。つまりそこには自分を中心とする円のチャートの上に相手戦車の位置が示されていて、どの程度の装甲や主砲をもつ相手戦車だと、どの円内のどの角度に入れてはいけないかをそれで確認するわけである。
そして前記のように各ミッションの目的は、その地域に点在する燃料油井をなるたけ多く確保することであり、それと自側ダメージの兼ね合いで、最終的な演習スコアが決定される。プレーヤーは小画面に表示されるそのスコアを見ながら行動を決めていく。
地形の細かい凹凸の意味
また地形の細かい凹凸には次のような意味が含まれている。すなわち消費者が「価格」と「品質・ブランド」のどちらに強く動かされるかということが、そこに表現されているのである。
一般に地形の凹凸や遮蔽物が少ない平坦な地形だと、長射が効くのでとにかく主砲と正面装甲が物を言う。その場合、高地に陣取った強力な戦車が周囲を完全に射程に収めて制圧できるので、それは「消費者が価格よりもとにかく品質とブランド力で選択を行なう」状況に相当するわけである。
逆に凹凸が大きいと、その陰になっている部分を制圧するには、近くまで出向いていかねばならず、そうなると機動力が物を言う。つまり特に黄色のゾーンの場合、地形の凹凸が大きいことは、その市場が価格に敏感であることを意味するわけである。
そして一つのゾーンの中に地表が平坦な部分と凹凸の多い部分が混在していたとすれば、それはある所得層の中に、品質・ブランドを重視する消費者と価格を重視する消費者が混在していることを示している。
なおそのように凹凸の大きい地形では、相手戦車がこちらの側面に回り込んできた場合、相手が攻撃を始める寸前までそれを発見できず、対応まで数秒間しか時間の余裕がないということが多い。それに対して遮蔽物が少ない地形だと、まあ大体余裕をもって対応ができる。(それは、価格に敏感な市場ほどせわしなく気が抜けないことを意味する。)
車体重量と燃費
また演習モードの場合、重量と燃費の関係はゲーム化しておくと、よりリアルになる。つまり重量を軽くするほど、同じ黄色のゾーンを通過する際にも高い速度で移動できるということである。(これは経済の場合では、思い切って大きく値下げすると、その市場を早く制覇できることを意味。)これは、相手に先んじて拠点を押さえたい時などに有効である。
また燃費自体も向上し、同じ量の燃料で遠くまで行けることになる。
そしてこの戦車戦の場合、いつも燃料ぎりぎりで作戦行動するので、気をつけていないとミッションの中途で燃料がなくなって行動不能に陥ることが多い。(中途での資金不足に相当。)
そのため戦車長のために、手持ちの燃料で目標地点までどうやって達するかを検討するためのチャート画面もあると良い。
ところで演習ミッションの中には、地図上に示されている目標、つまり燃料油井は、実は存在が「予想」されているだけで、行ってみたら空井戸だった、という、プレーヤーを少々困らせる設定も用意されることがある。(これは、あると予想していた需要が実は存在しなかったことに相当。)
こうなってしまうと、しばしばそこで身動きがとれなくなるのは言うまでもない。(ただしプレーヤーには通常は、どれが空井戸かを事前に判断する材料は滅多に与えられておらず、ただ地図情報の信頼度が何%ぐらいかということが知らされているに過ぎない。この場合、推定埋蔵量が大きいとされる油井ほど空井戸である可能性が高く、どの油井を目標に選ぶかが一種のギャンブルとなる。)
そしてこういう窮地に陥った時に打つ手として、経済と対応させるために次のようなユニークな設定が用意されている。
つまりこういう場合苦肉の策として、車内にある砲弾の中の火薬を代用燃料として用いることで、何とか出発点まで戻ることができると設定されているのである。
つまり火薬を採り出して溶剤に溶かすなどして液化し、燃料タンクに混ぜるわけである。ただしこの代用燃料は質が低くて燃費が悪いため、搭載してある砲弾全部を潰して使っても、車体をよほど軽くして機動性や燃費を向上させておかないと出発点までは戻れないものとする。
要するにその場合、側面装甲の大部分を放棄せねばならないので、走行中の損害の蓄積は避けられず、大きな損害を受けながら命からがら出発点まで舞い戻ってくるという結果になる。(これは売れなかった製品を捨て値で処分して撤退することに相当。)
戦場の具体的な面積
なお戦車戦の舞台となる戦場の具体的な面積だが、仮想地球儀を製作する際に求められた換算だと、GDP100万ドルが1平方kmに相当すると算出されている。そのため面倒だから1ドル=100円で換算すると、ここで戦車戦を行なう戦場は、1平方km当たりで大体1億円規模の市場を意味していると思ってよい。(なお、1ドル=110円ぐらいで換算して半端な数字にしておいた方が本物くさくて良いという意見もある。)
文字情報を表示する場合、地表に1キロ四方の四角形も描いてやって、そこに「この面積が1億円規模の市場に相当」の文字を示すと面白い。
一方において、戦車1両は年間設備投資5億円の力に相当しているので、演習モードで戦車1両同士が対決する戦場は、大体10平方km、要するに3000m四方前後の広さを想定すれば良いのではあるまいか。
歩兵の設定
もう一つ、できれば歩兵を陣地に展開させる機能をつけると、ゲームも俄然面白くなる。つまり仮にこちらが、黄色や赤で示されたゾーンのどこかの防備を固めたいが、側面装甲を投棄したくないので戦車はそこへはあまり行かせたくないというとき、戦車のかわりに歩兵をそこに展開させて伏せておくのである。
これは経済戦争への対応においては、先にどこかの市場を押さえた企業が、先発組の利点を活かして顧客を様々なきめ細かい手段で(つまり価格競争以外の手段で)囲い込んで後発組の参入を困難な状態にしておくことに相当する。
そしてゲームの場合キーを押すと、主砲が向いている方向に向かって歩兵が歩き出し、指定した距離の地点まで進んでそこで防御体勢を整える。
そしてもし彼らが展開している地点に敵戦車が入ってきた場合、その側面に攻撃を加えてダメージを与えることができる。逆に歩兵は味方戦車の援護がないと大損害を受けるため、歩兵を展開させてしまうと、こちらの戦車は彼らを援護できる位置に留まり続けねばならないというデメリットが生じる。
また、歩兵は徒歩で展開するため展開完了までにはある程度の時間がかかり、展開を終える前に相手戦車が現われてしまうと、待ち伏せをするどころか逆にこちらの歩兵がやられてしまう。(つまり先発組と言えども十分な時間の余裕がないと歩兵は展開させられないことになる。)
また戦車が撤退する時は、歩兵を戦車の位置まで呼び戻さねばならず、彼らが駈け足で戻ってくるまで戦車はその位置に留まらねばならない。もし彼らを置き去りにして戦車だけが撤退すると歩兵は全滅し、それはスコアから差し引かれる。なお呼び戻しの際には主砲から発煙弾でも発射して姿を隠してやると良いだろう。
そしてゲームがもっと進歩したならば、機械化歩兵とAPCを登場させ、それを持つことの利点などが実感されるようにすると良い。
逆に、老舗が伝統的な商品でしっかりと需要を囲い込み、あまり設備投資が行なれていない静的な市場は、対戦車砲陣地でカバーされた領域に相当する。
なお、これは映像上では小さすぎて情報表示は困難かとも思われるが、歩兵がそこに据える軽機関銃の力に関して、文字情報表示の際の換算を一応記しておくと、弾薬ベルト1本分(7.62mm弾50発)の射撃は、経済世界では経理部から必要経費として供給される30万円の資金の力に相当する。
航空支援の要請
ところでこれとは別の「おまけ機能」として、キーを押すと航空支援(CM)を要請できるようにしておくのも面白い。
経済戦争の場合、航空支援の効果は、特に後発組が相手戦車に挑戦する際に、前もってそれらの歩兵陣地を潰しておく際には有効ではあるまいかと思われる。
金融機関との関係
金融に関しては、銀行を鉄道輸送で、証券をトラック輸送でそれぞれ表現し、映像上での文字情報表示の際には、鉄道輸送の列車の上に「銀行(間接金融)」を、道路輸送のトラックの上に「証券(直接金融)」の文字を、それぞれ表示する。
そして演習モードの場合、それは戦車への燃料・弾薬の再補給という形で、ミッションの中に要素として組み込むことができる。
ミッションの例としては、途中の敵を撃破した後に鉄道補給地点まで到達しないと、燃料弾薬の再補給が受けられずに降伏せざるを得ない状況に追い込まれる、などというものが考えられる。(この場合、たとえ補給地点までたどり着けたとしても、獲得スコアが足りなければ補給要請を断わられて列車は来ない。無論、融資打切りがこれに相当する。経営者にとってはシビアだが、リアリティはあるだろう。)
企業乗っ取りの表現
なお、最近急速に関心事となっている、株の大量売買とそれによる企業乗っ取りは、昔東部戦線で恐怖の的になった、いわゆる「カチューシャ」あるいは「スターリンのオルガン」の名で呼ばれる多連装ロケットと、それを用いた相手側司令部への奇襲的投射で表現されるが、ここでは詳述する余裕がないので、それに関しては稿を改めて述べることとする。
これで一応戦車戦ゲームとしては成立するだろう。
プレイバック映像での解説表示
なおミッション終了後に、各戦闘状況がどんな経済状況に対応するかの説明文をプレイバック映像上で文字情報として表示する機能だが、理想を言えばプレーヤーがどんなパターンで戦車戦を行なおうとも、そのプレイバック映像でそれに対応する経済現象の説明文が正確に画面上に表示されていくことが望ましい。
しかし実際問題としては、適切な説明文の選択を機械に自動的に判断させることはかなり難しいと考えられるため、その場合には、次のような手も考えられる。
つまりこの場合、各演習ミッションごとに、「指導教官が同乗する模範ミッション」というものを用意しておき、そのプレイでは戦車の操縦や射撃に関してすべて教官から指示が出され、プレーヤーが厳格にその指示通りに戦車を操作していく形態にする。
つまり表面上は戦車の操縦はプレーヤーの手が行なうが、戦闘パターンそのものはあらかじめ用意されたものをそっくりなぞっていくわけである。
そして説明文もあらかじめ用意しておき、ウェイポイントに達したり射撃操作を行なったりした時ごとに順番にそれを出していけば良い。そうすればプレイバック映像上では、あたかも戦車戦の状況を機械が判断して「この戦闘状況は経済世界では何々を行なった状況に対応する」などの文字情報を表示しているように見えるわけである。
こういう模範ミッションを何十通りか用意しておけば、それだけで経済のケース・スタディ用の教材として使えるだろう。
模範ミッションのアーカイブ・モードへの応用
また、この模範ミッションの製作を通じて、いろいろな局面での戦闘行動の基本パターンを洗い出し、それぞれに対応する経済状況を一言で表現できるようにしておけば、アーカイブ・モード製作にそれをそっくり応用できる。
つまりアーカイブ・モードでは、それらの語句が一覧表として掲載されていて、プレーヤーが現実に起こった経済状況に対応する語句を選択して入力すると、それに対応する映像パターンが呼び出される。そしてそれらをつなげていくと、それらしい戦闘経過の映像が出来上がるというわけである。(必ずしも滑らかにはつながらないかもしれないが、そういう部分は霧、硝煙、雲などで隠してやればごまかせる。)
アーカイブ・モードは演習モードより戦場規模が格段に大きいので、直接一から戦闘経過を描き出すのは恐らく大変な手間になるはずである。そのためむしろこのように、演習モードの中で生じた典型的なパターンをユニットとして、それをつなげてしまう格好で作っておいた方が良いのではあるまいか。
それはまた、演習モードだけを先に作って後でアーカイブ・モードを増設するという製作方法をとる場合に、ユニットパターンのベースとなる演習モードの部分には、後で修正を加える必要が滅多に生じないことになり、その点でも有利である。
戦場視察モードの様子
一方「戦場視察モード」に関しても、最初の時点ではとにかく情報が十分に集まっていないため、大したものは用意できないだろう。そのため最初のパイロット版では、これを用意するにしても、ある日時に起こった実際のデータを大まかに組み合わせて、とにかくそれらしい映像を作っておくしかない。
これに関しては、仮に比較的規模の大きい市場での経済戦争を見ようとした場合、連隊規模で百両単位の戦車戦を上から眺める映像になる。(年間設備投資額が500億円の市場だと、戦車百両の激突になる。)
その場合、具体的な戦車戦の戦術的推移を描写するのはちょっと無理で、ただ地表の上を何十両もの戦車が動いているという状況の描写で我慢するしかない。
そこでこういう場合、見ている側の興味をつなぐのが、その上空での航空機の活動である。つまりそれら地上の各企業がどの程度のCMをオンエアしたかが、近接支援機の活動として表現される。
そしてドラマなどの番組本体が、その近接支援機を護衛する戦闘機に相当し、それがどの程度の視聴率をとったかが、相手の戦闘機と近接支援機を何機撃墜・撃退したかという具体的スコアに換算されて表現される。
無論この場合、「情報表示モード」にしておくと、番組名などが映像上の機体の位置に文字情報で表示されて、機体と一緒に動いていく。これらの映像は初めて見る者にはそれだけでかなり衝撃的なものであろう。
最初の時点ではあまり正確なものを作るのは無理なので、そういう場合はむしろ不完全な映像のままにしておいて、「情報収集率が30%未満、細部不明」などという表示が出るようにすると、かえってプレーヤーに「もう少し見てみたい」という気持ちを起こさせるかもしれない。
まあ作る順序としては、先ほどから述べているように、こちらのモードを後回しにしても、とにかく演習モードの基本部分を作ってしまって、それを動かしながら試行錯誤的に改良していくのが良いだろう。
描かれる戦車の形状
ところで、ここで描かれる戦車がどのような格好をしているかであるが、これに関しては、先ほども述べたように、場合によっては必ずしも砲塔をもつ戦車ではなく、砲塔をもたず主砲が前方だけの限定旋回の、いわゆる突撃砲・駆逐戦車タイプにしていおいた方が面白くなる可能性がある。
あるいは最初に何通りかの戦車を選択できるようにしておく、というゲーム形態でも良いかもしれない。つまりその選択の中で駆逐戦車型か旋回砲塔型かが選べるようになっているわけである。
そして文字情報を表示する場合、映像の戦車の上には「戦車1両は5億円の設備投資(年間)を行なう能力をもつ企業の力に相当する」の文字が示される。
・駆逐戦車タイプの特性
その場合、駆逐戦車タイプを選ぶと、柔軟な戦闘はできないかわり、旋回砲塔型の戦車よりも1ランク威力のある主砲を装備できるというように設定しておくと良い。
(なお両者の経済的対応物に関しては今のところやや不明確だが、全般的に言って、ある企業が一部門、一芸だけへの「特化度」が高いほど駆逐戦車に近く、それが低いほど旋回砲塔型に近いと言えるのではないか。)
・足回り
戦車の足回りやサスペンションに関しては、対応ルールでは経済戦争で使われる戦車は40トン未満の「巡航戦車」に対応するということになっているので、比較的直径の大きな転輪を持ついわゆる「クリスティ型」として描いておくことが必要である。(これは後に述べるように、政治部門との対照をわかり易くするため。)
なお足回りなどの部品に関しては、機械化歩兵が搭乗するAPCとの共通部品が多いという設定なので、もしAPC(中小企業)を描く必要がある場合(特に日本企業の場合)には、それに留意のこと。
・燃料採掘装備
また各戦車には、燃料採掘用の装備も分解された形で搭載されていて、それを現地で組み立てれば簡単な燃料油井を作れるという設定になっているので、その装備を車体後部にそれらしく描いておくと良い。
・主砲
主砲に関しては、装甲板への貫徹力は大きいがコンクリートなどに対する破壊力は比較的劣る、というものを考える必要があるため、比較的小口径、長砲身(高初速)の砲が想定されることになる。
そのためとりあえず演習モードでは日本企業の場合の一つの目安として、口径が75mm級の長砲身(砲身長70口径クラス)の戦車砲を中心に、その上下から選択できるようにしておくのが適切だろう。(要するにドイツのパンター戦車の主砲に近い要目だと思えばよい。)
一方米国の大企業などの場合には、日本との対照を鮮やかにするため、もう少し口径は大きいが初速にやや劣る砲を割り振っておくと良い。つまり砲弾の投射重量は米側がやや勝るが、命中精度などは日本の方がやや勝る、というぐらいの設定が妥当なのではないかと思う。
このように設定すると、とにかく日本戦車の主砲は巡航戦車同士の対戦車戦闘(企業同士の品質競争)のみにおいて優れ、逆にコンクリート施設(政治のからんだ局面)や非装甲目標に対しては、とかく米国戦車に劣る、ということが表現される。
ところで少々マニアックな設定だが、いっそのこと各国の主要通貨に、それぞれ特有の口径サイズを割り振ると面白いのではあるまいか。つまりドルは口径何ミリ、円は口径何ミリ、という具合に通貨単位ごとに砲弾口径を制定してしまうわけである。
そうなってくると、もともとこの無形化世界全体として、現代のブッシュ・アメリカをかつてのドイツ軍のイメージと重ねるスタンスでいるため、米ドル経済にドイツ戦車のテイストを持ち込むことが必要となり、必然的にドルに相当する口径は「88ミリ砲」とするのがベストだということになる。
そして先ほどのように、円に相当する口径が75ミリ砲で、主砲の砲身は70口径クラス(砲身の全長が口径サイズ75ミリの70倍)と設定するなら、アメリカ戦車の主砲は、口径は88ミリ砲でも、もう少し砲身長を短くして50口径クラスに設定し(要するにティーガー1型の主砲だと思えば良い)、好敵手ぶりを表現すると良い。
もっとも、日本戦車にはイギリスの巡航戦車のテイストを持ち込んだ方が、イギリス戦車の生真面目で少しひ弱な感じが何となく日本企業っぽいように思えなくもない。そうなると、円の口径も76ミリとするか75ミリとするか、ちょっと判断の分かれるところだろう。同様に、ユーロの対応口径の設定も少々議論が必要であり、ここらへんは投票で決めた方がいいかもしれない。(ただしいずれの場合も口径は100ミリ未満。)
ただし、中国の人民元に関しては、これはもう85ミリ砲(ソ連のT34戦車の主砲)に設定することにほぼ異論はあるまい。
(このあたりの話は一見マニアックだが、逆にこういうところでマニア心をくすぐる仕掛けを作っておくと、意外に力を発揮するものである。そして日本の現在の30代後半から40代の男性は、ほとんどが戦車のプラモを作った経験があって、こういう知識も意外と浸透している。というより、実は現代の日本の中堅サラリーマン男性の8割は、少なくともその隠れファンないしその潜在的資質を持っており、そう考えるとこの力は結構馬鹿にならないのである。)
・参考−議会攻防戦用の戦車
なおこれはこのゲーム自体には登場しないかもしれないが、参考までに述べておくと、議会攻防戦で代議士たちが使う戦車は、すべての点でこれとは対照的な要目をもつ陣地戦用の重戦車(50トン級)として表現される。
例えば土建屋的な地方政治家の戦車などは、第二次大戦初期の重戦車のように、足回りに細かい転輪がたくさんついた、いかにも低速で鈍重な前世紀の遺物のような戦車で表現すると、笑える設定になる。(砲塔なども丸っこくて、全体的に肥った感じのシルエットが良い。)
主砲は口径は大きいが(120ミリ砲級が標準。少なくとも口径100ミリ以上。)ずんぐりした短砲身のもので、コンクリート壁を破壊する能力は高いが、低初速ゆえ装甲貫徹力はあまり大きくない。
装甲は、重戦車であるため前面だけでなく側面装甲もかなり厚く、巡航戦車と違って段階的に投棄したりはできないが、遠距離なら側面装甲でも敵戦車の砲弾を十分弾き返せる。
この戦車はコンクリートの陣地地帯の中での、地べたを這い回るような攻防戦を役割としており(コンクリート壁は法律を意味する)、長距離走行を必要とされる巡航戦車とはちょうど逆の性格である。
(なお、この種の陣地戦には地雷がつきものだが、ここでは地雷への対応物はさしずめ「表面からはわかりにくい既得権益」全般といったところだろう。)
ともあれ以上のような大まかな設定で、まず演習モードを組み上げてしまい、それを実際に動かしてみて、経済の現場にいる人々の感想なども採り入れつつ、設定の修正や他の部分の製作などを行っていくのが良いだろう。
他の細部の表現などに関しては、機会を改めて述べていくことにする。
PathfinderPhysicsTeam