ポン・デュ・ガール水道橋にみるステルスデザイン





 ここに掲載したのは、本の20〜21ページの見開き写真のカラー原画です。

 本では、過去の建造物の中でステルス・デザインとして優れたものを例にとり、そ
れを故意にステルス性を悪化させたデザインに変更するとどう見えるかについて論じ
ていますが、その例の一つとして紹介されているのがこれらの写真です。そこで、以
下にもう少し説明を補っておきましょう。

 この写真の建造物は、南仏にある「ポン・デュ・ガール水道橋」という、ローマ時
代に作られた水道橋です。二枚の写真のうち、アーチ型の橋の方がオリジナルで、直
角型のものが、それをCG加工してステルス効率の悪いデザインに変更した場合の写真
です。

 これを見比べてみると、アーチ構造を直角型に変えたことによって、見るからに閉
塞感が強くなっていることがわかります。これはステルス理論で言う「コーナー・リ
フレクター」、つまり直角の隅が作り出す強い反射の効果によるものであり、それが
どれほど強力に閉塞感に影響するかが良く理解できるでしょう。

 またこの写真ではもう一つ、橋の上部に規則正しく並んだ小アーチがCGで除去され
ています。こうすることで、オリジナルの建造物ではそれらが発生していた共鳴効果
が、「改悪後」の橋では消えており、それがさらに閉塞感を増していることがわかり
ます。
 要するにコーナー・リフレクターと共鳴効果の有無によって、反射率すなわちステ
ルス効率にこれだけ大きな差が出るわけで、その効果をカラーでじっくりご覧くださ
い。

 なお本で示した反射率の数値は、計算ソフトが完成する以前に手計算で求めたもの
であるため、計算ソフトを使って求めた場合と多少の違いが出るかもしれません。
(20061012 長沼伸一郎)
Pathfinder Physics Team