「無形化世界の力学と戦略」電子書籍化のご案内
last update: 2010/06/16
 

 「無形化世界の力学と戦略(上下巻)」は今から13年前の1997年に出版された本ですが、むしろ絶版後になって入手したいという方が増え、ヤフオクなどでは上巻だけでも数千円前後が相場の、入手困難な「幻の名著」と言われていました。しかし今回それが電子書籍の形で甦り、安価にどなたでもお読みになることができるようになります。
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 この本は出版当時は余りにも内容が斬新でありすぎるとして、なかなか理解されなかった部分があるのですが、現在読み返してみると、むしろ現在日本が置かれた状況をぴたりと予言していて、まるで現在書かれたもののように錯覚することさえあり、13年前の記述が内容面でほとんど修正の必要がないことには逆に著者自身が意外に思うほどでした。
 そのためむしろ当時それをどの程度正確に予測し得ていたかを示すため、電子版ではあえて原稿に全く手を加えず、一字一句そのままの形で電子化されています。(なお当時の《書評》が購入サイト内に掲載されていますので、ご参照ください。)
 
 実際にその内容を振り返ってみても、例えば上巻の末尾(電子版では上巻160ページ)の部分で述べられていることは、現在の日本の活路がどこにあるかの処方箋として、むしろ今の時代でこそ有効に使えるのではないかとさえ思えます。
 また下巻にある中国と日本の戦略的な関係の図(下巻207ページ)にしても、当時は斬新に過ぎたものの、米中のG2体制が現実化しつつある現在から振り返ると予言的で、同じく下巻で述べられている中国の「コラプサー化」の部分(同じく電子版では下巻150ページ)なども、中国が存在感を増しつつある昨今、当時よりも遥かに重要性を増しているように思われます。
 
 このようにその内容のいくつかは、現在の日本がどこへ向かうべきかの処方箋としても十分に使えるのですが、一方、本書と同時に電子書籍化される「現代経済学の直観的方法」では本の性格上、そうした具体的な戦略の話にはあまり踏み込むことができませんでした。しかしこう考えると、むしろその部分は皮肉にも13年前のこの本が担う形になっていると言えるかもしれず、そのような読み方をしていただいても良いと思います。
 (なお下巻の第3部、冷戦の50年間を無形化した戦史として描き出す部分は、あるいは現在の読者にとっては関心が薄いかもしれず、カットしようかとも思いましたが、電子書籍の場合は厚さ自体は問題ないのでやはりそのままとし、ただ下巻の価格はこの部分をカットした状態を考えて設定されています。)
 

■ この本を読む新しい視点とその意義

 この本は出版当時はただ内容の極端なまでの斬新さが印象に残るだけという状況だったのですが、13年を経た今、それとは少し異なる読み方が可能となっているようです。それは「この本で13年前に書かれていたことが一体どの程度、現在を正確に予測していたか」という視点で現在の立場からそれを検証してみるという、冷徹な採点評価としての読み方ができるということです。
 一般に科学の世界では、ある理論や著作が正しいかどうかは「予言に成功したか」ということが最大の評価基準とされ、それに成功したものは如何なる権威による批評よりも上に置かれます。本来なら文系の国際政治や戦略を扱う著作の世界もそうあるべきなのですが、しかしここでは多くの本がすぐ消えてしまって入れ代わりが非常に早いためか、その最も重要な作業がうやむやにされがちで、そしてそういう時には議論全体が表面的に上滑りしたまま、全く前進が見られなくなるものです。
 しかしこの本の場合、ついにそれができる稀な状況が訪れたわけで、そのため読者の方にはとにかく「その内容が13年前にどの程度現在を正しく予測していたか」という読み方で目を通し、それを当時出版されていた他の書籍と比較して、全体を冷静に評価採点していただきたいと思うのです。
 無論それは批判的な態度でも一向に差し支えなく、そしてそれを行うことは単にこの本一冊の評価に留まらず、むしろこれをきっかけにこの10年の日本の知的世界の状況全体を俯瞰することでもあるため、内容の肯定・否定にかかわらず、今を生きる知識人の一つの義務として是非やっていただきたい作業であると思っています。
 
 
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