大変お待たせしました。「経済数学の直観的方法」の姉妹編となる「確率・統計編」がついに11月16日に刊行となります。

以前から予告していたように、本書では金融工学のブラック・ショールズ理論を、理系と文系のちょうど中央位置に視点を据えて直観的に解説するという、ユニークなことを行っており、本書と「マクロ経済学編」の2冊が出揃うことによって、経済数学の「二大難解理論」を最短距離で理解する道が拓かれることになります。

しかし本書の場合、特に理系読者の方にとっては、ブラック・ショールズ理論それ自体よりもむしろ、確率・統計の基礎部分でわからなくなりがちな部分を一点突破して、その本当の理解を立て直すための本としての性格が強いかもしれません。

思えば「物理数学の直観的方法」の時にも、意外に理系の優秀な人が「ベクトルのrot」でつまづいていることが非常に多いという、かなり予想外の事実が判明しましたが、今回もそれとやや似ていて、確率統計の場合、理系の非常に優秀な人でも、初歩の「標準偏差」あたりの段階でつまづいていることが意外に多いのです。かといって、今さらそれを人に聞いたり学び直したりするわけにもいかず、ちょうど「物理数学・・・」のような形で、その直観的理解を埋める本が切望されていたのではないかと思われます。

そうだとすれば、この確率・統計編はまさにそこを埋める本となっており、その意味では本書は経済数学の本というよりは、むしろ「物理数学の直観的方法」の姉妹編として、同書で抜けていた確率統計の部分を補うための「確率・統計の直観的方法」だと思っていただいても良いかもしれません。そのため経済に全く関心のない理系読者の方にも、大変に役に立つ本ではないかと思われます。

また一般読者の方にとっても、とにかく今まではこのブラック・ショールズ理論の理解が難しすぎたため、この理論の意義や他の分野への転用などは皆目見当がつかない状態にあったと思われます。しかし本書ではこの理論の直観的な理解の道を拓くことで、それが将来の資本主義にどんな示唆を与えるのかなどについても見渡すことが可能となり、その部分は一般読者の方も教養的な読み物として興味深くお読みいただけるのではないかと思います。、

なお、これからご購入される方のために一言付け加えておきますと、実はこの本では重要な見開きの図に小さな凡ミスがあり、これは是非とも読まれる前に、簡単に修正しておいていただければと思います。
それは具体的には本書の172ページにある見開きの図で、この見開き図は、ブラック・ショールズ理論を一枚のパノラマ図で一挙に理解するという、非常に画期的で重要なものなのですが、残念なことに図の中に書かれた等式の中で一か所、「2乗」を示す上付きの「2」という小さな数字が落ちてしまっています。

まあこれは、本文を読んでいけば凡ミスであることはすぐにわかり、別にここで指摘せずとも各自の判断で修正できる性格のものではあります。ただこのパノラマ図は、何しろブラック・ショールズ理論を一挙に理解するという、一種のカタルシスを伴うものなのに、その感動が凡ミスで一瞬殺がれてしまうというのは、著者としては何とも悔しいのです。

そしてこれは簡単な修正ですむことなので、できればお読みになる前に、その小さな「2」を鉛筆で書き加えておいていただきたいと思います(詳細はこちら)。